仔双子ミロ-Ⅷ
2013/07/25
ミロを捜してキッチンに足を踏み入れれば、ミロは椅子に腰掛け食卓で頬杖を突いている。
考え事でもしているのか?我々が来た事にも気付いていない様だ。
「ミロ?」
「ん?」
「考え事か?」
「ん…、まぁ…。」
「何を考えていたんだ?」
「え…?えと…、えぇと………」
「言い難い事なら無理には聞かんが…。実はな、ミロ。話が有るのだが、今、良いか?」
「あぁ、うん。改まって…何?」
「カノンと二人で話し合ったのだがな姿のままと言う訳にもいくまい。長に元の姿に戻してもらう事にしたのだ。」
「え…?何…で?此処に居るのが嫌になったの!?いや…、違う、そうじゃなくて…、そうだよな、それが当たり前の事なんだもんな…、けど………」
「ミロ、落ち着いて。落ち着いて聞いてくれ。
此処に居るのが嫌になったりなどしていない。逆に、私もカノンもずっとミロと居たい位だ。それは分かってもらいたい。」
「う、うん。そか…、良かった…。」
「だがな…、本来の姿を取り戻したいのだ。本来の姿を取り戻すには、我々の世界に戻り、長に戻してもらうしかないのだ。勿論、永遠の別れになどならん。何時でもミロの戻って来れる。許されるなら、これからもずっと一緒だ。分かるな?」
「うん。分かってる。誰だって本当の自分の姿で居たいと思うのは当たり前の事だ。」
「そうか。では、何故あんなに取り乱したのだ?」
「それは…」
そう言ったきり、ミロは口を閉ざしてしまった。
我々の間に長い沈黙が流れた。
言い難い事なら急かす訳にはいかないだろう。だが、全て理解していながら取り乱すなど余程の事だ。話してもらいたいのだがな…。
「ミロ、どうしても言いたくないなら言わなくても良いんだぞ?
俺もサガも、ミロに無理強いはしたくないからな。」
「カノン…。ありがとう…。でも、ちゃんと言わないと…。」
目を閉じ、フゥ~っと、深く長く息を吐き出したミロは、意を決した様に目を開くと口も開いた。
「俺…、本当の姿に戻った二人に逢いたい。逢いたいけど…、逢ったら…その…、うぅん。ハッキリ言わないとな!
サガとカノン、凄く可愛いから、大人の姿って、凄く良い男なんだと思う。だから、そんな姿で…、……あんな事とか…言われたら…、……す…、す………」
「俺に惚れるって?全然問題ないだろ?俺は本気だ。ミロを愛してる。ミロと相思相愛!願ったり叶ったり!寧ろ、俺からお願いしたい!
ミロ、愛してる。俺と付き合って下さい!」
頭下げ、手を差し出すカノン。
「おい…。相手がお前とは限らんだろうが…。
最後迄ミロの話を聞いてやらんか!」
カノンの後頭部を力一杯叩いてやった。
「つっ!………悪い…続けてくれ…。」
後頭部を擦りながら私を睨み付けた後に、ミロに話を促した。
「嗜好の好きなら直ぐに言えるのになぁ~…。
ハァ…。何か、今ので拍子抜けって言うか、力が抜けたって言うか…。
フゥ…。あのな…、素直に好きになっても良いなら問題無いんだ…。一応…。…多分…。
でも、駄目なんだ…。」
そう言ったきり、また口を閉じてしまった。
「二人共、読んだんだろ…?あの本…。」
「…氷の王が出てくる話のか…?」
「あぁ…。どう…思った…?」
これは…まさか…
「王子とミロが酷似していると思った。」
やはり、まさかなのか…?
私は感情を込めず、淡々と答えた。
「だよな…。思うよな。二人共、頭脳明晰って感じだもんな。
…寒くならないと来ない知り合いなんて言われたら…分かるよな…。
常に…咲き…誇る…薔薇……なん…て………言わ…言われ…た…ら……分か………」
ミロの声が鼻声になり…、泣きながら話している内に、しゃくりあげながら話す様になった…。
ミロ…やはり…そうなのか…
「ちょっと待てよ!おかしいだろ?…あれって民話だろ?昔からのお話なんだろ?実話だとしても、そんな昔の話の王子がミロなんておかしいだろ?まさか、あれか?話に出てきた女神の力で、うちの長老みたいに見た目だけ若いままとかか?それとも、一年に一日分しか心臓が動かないから、実は数日しか経ってませんとかか?」
明らかに動揺したカノンがやたら疑問系で捲し立てる。
(やたら疑問系って、お前は若者気分か…。
一年に一日分しか心臓が動かないからって何だ…。よくそんな事を思いついたな…。
動揺した者を見てると、案外冷静になるというのは本当の事
なのかも知れん…。)
私は、その姿を見ていると落ち着いてきた…。
「違…違う…。あれ…あの話…書いたの……俺…なん…だ。」
「は?」
カノンが捲し立ててる間に、ミロは少し落ち着きを取り戻した様だ。
「あの話…書いたの…俺…なんだよ。
父上…に、新しく…現代…語訳された、民話として…本にしてもらったんだ…。」
「何故………。」
「この国の敬うべき方々の話だ…。言い伝えて当然だ…。
それに、父上と母上の愛情が嬉しかったんだ…。
俺の…、存在を残しておきたかった…。」
「どういう意味………」
「俺の事は、この国の人々の記憶から消されている…。
当然だろう…。一国の王子が急に消えたなんて…。上手く誤魔化し続けたりなんて…、出来る訳がない。
でも、父上と母上と…、城の一部の人達は覚えてくれているから…良いんだけどな…。」
だから、こんな辺鄙な所でも十二分に生活出来ているのか…。
「ミロ、辛かったな…。
もう、十分だ。
ミロ。お前は自由になるが良い…。囲いの中で一生涯過ごす事は無い。
私達が必ずお前を自由にしてみせる…。」
「え…、何…言ってんの…?」
「だからな、氷の王だか何だか知らんが、ミロがいないと精霊の務めをやらんなんてふざけた事を言わない様に、お仕置きしてやるんだ。そうすれば、ミロは晴れて自由の身。囲われの身だからとか気にせず、俺と一緒に愛を温め合えるんだ。」
「違ぅ…。」
「え?」
「俺は囲われの身だと嘆いたりしてなんかないぞ…。」
「はぁ?否、だって、ミロ、あんなに泣いてたじゃないか。」
「あれは…、そうじゃないんだ…。そんな理由じゃ…ない…。」
(囲われの身を嘆いてる訳ではない?なのに、素直に好きになれるなら問題ないと言うのは…
つまりは…、まさか、そういう事なのか…。)
私は頭の中で一つの結論に達して、落胆した気分になる。
横を見ると、カノンもまた、己が中で同じ結論に達した様だ。
だが、
「だから…、だから何だって言うんだ…?
俺がミロを好きになるのは、俺の自由だろ…。俺が、愛してる相手に愛されたいと願うのも当然の事だろ…?俺が願うのは自由だろ…?
俺は本気なんだ!『好きになってはいけません。』と言われて『はい、そうですか。』なんて、なれる訳ないだろ!」
「私だって同じ思いだ…。だが、我々の言い分はミロを悲しませる事になるのも事実…。
己のが欲望だけを貫くと言う訳には………」
「黙れ!理屈だけ並べ立てられて諦められる様な想いじゃないんだ!理屈じゃないんだ!お前は何時もそうやって………!」
「はい、そこまでな。」
突然我々の長が現れた。瞬間移動か!
正直、物凄く驚いてしまった…。
「長…。」
「長老!?」
「長老って呼ばない。
突然不法侵入でお邪魔してすまないね。ミロ王子。」
急に長が現れた事に吃驚した様で唖然とした表情のミロ。
「私の名はシオン。
この双子ちゃん達の保護者です。
全く。二人共、ちょっと甘い顔して自由にさせてやったら、一向に帰って来ないし。
私はね、サガが家出しても何処に居るかちゃんと把握出来てるんだよ。カノンが何処でフラフラしてたかも全部。
それでもね、二人共子供になってショック受けてんだろうなって思って、ちょっと勝手さしてやってただけなのに。
よりによって、氷の王の囲いに手を出すなんてな!
恋愛は自由よ。誰を好きになるのも自由。
でもね!それは、あくまでも自分の心の中だけの話!
世の中にはやって良い事と悪い事が有るの!想いを伝えちゃ駄目な相手も居るし、自分に振り向かせようなんてしちゃ駄目な相手も居るの!
世の中には秩序ってものがあるだろ!いい年したお前達に、こんな説教する破目になるなんて…、頭の中迄子供に戻ったのか!」
一端終わります。
シオン様突如登場です。
シオン様に無理から収集つけてもらいました(^^;
シオン様割りとフリーダムなお方です(^^;
考え事でもしているのか?我々が来た事にも気付いていない様だ。
「ミロ?」
「ん?」
「考え事か?」
「ん…、まぁ…。」
「何を考えていたんだ?」
「え…?えと…、えぇと………」
「言い難い事なら無理には聞かんが…。実はな、ミロ。話が有るのだが、今、良いか?」
「あぁ、うん。改まって…何?」
「カノンと二人で話し合ったのだがな姿のままと言う訳にもいくまい。長に元の姿に戻してもらう事にしたのだ。」
「え…?何…で?此処に居るのが嫌になったの!?いや…、違う、そうじゃなくて…、そうだよな、それが当たり前の事なんだもんな…、けど………」
「ミロ、落ち着いて。落ち着いて聞いてくれ。
此処に居るのが嫌になったりなどしていない。逆に、私もカノンもずっとミロと居たい位だ。それは分かってもらいたい。」
「う、うん。そか…、良かった…。」
「だがな…、本来の姿を取り戻したいのだ。本来の姿を取り戻すには、我々の世界に戻り、長に戻してもらうしかないのだ。勿論、永遠の別れになどならん。何時でもミロの戻って来れる。許されるなら、これからもずっと一緒だ。分かるな?」
「うん。分かってる。誰だって本当の自分の姿で居たいと思うのは当たり前の事だ。」
「そうか。では、何故あんなに取り乱したのだ?」
「それは…」
そう言ったきり、ミロは口を閉ざしてしまった。
我々の間に長い沈黙が流れた。
言い難い事なら急かす訳にはいかないだろう。だが、全て理解していながら取り乱すなど余程の事だ。話してもらいたいのだがな…。
「ミロ、どうしても言いたくないなら言わなくても良いんだぞ?
俺もサガも、ミロに無理強いはしたくないからな。」
「カノン…。ありがとう…。でも、ちゃんと言わないと…。」
目を閉じ、フゥ~っと、深く長く息を吐き出したミロは、意を決した様に目を開くと口も開いた。
「俺…、本当の姿に戻った二人に逢いたい。逢いたいけど…、逢ったら…その…、うぅん。ハッキリ言わないとな!
サガとカノン、凄く可愛いから、大人の姿って、凄く良い男なんだと思う。だから、そんな姿で…、……あんな事とか…言われたら…、……す…、す………」
「俺に惚れるって?全然問題ないだろ?俺は本気だ。ミロを愛してる。ミロと相思相愛!願ったり叶ったり!寧ろ、俺からお願いしたい!
ミロ、愛してる。俺と付き合って下さい!」
頭下げ、手を差し出すカノン。
「おい…。相手がお前とは限らんだろうが…。
最後迄ミロの話を聞いてやらんか!」
カノンの後頭部を力一杯叩いてやった。
「つっ!………悪い…続けてくれ…。」
後頭部を擦りながら私を睨み付けた後に、ミロに話を促した。
「嗜好の好きなら直ぐに言えるのになぁ~…。
ハァ…。何か、今ので拍子抜けって言うか、力が抜けたって言うか…。
フゥ…。あのな…、素直に好きになっても良いなら問題無いんだ…。一応…。…多分…。
でも、駄目なんだ…。」
そう言ったきり、また口を閉じてしまった。
「二人共、読んだんだろ…?あの本…。」
「…氷の王が出てくる話のか…?」
「あぁ…。どう…思った…?」
これは…まさか…
「王子とミロが酷似していると思った。」
やはり、まさかなのか…?
私は感情を込めず、淡々と答えた。
「だよな…。思うよな。二人共、頭脳明晰って感じだもんな。
…寒くならないと来ない知り合いなんて言われたら…分かるよな…。
常に…咲き…誇る…薔薇……なん…て………言わ…言われ…た…ら……分か………」
ミロの声が鼻声になり…、泣きながら話している内に、しゃくりあげながら話す様になった…。
ミロ…やはり…そうなのか…
「ちょっと待てよ!おかしいだろ?…あれって民話だろ?昔からのお話なんだろ?実話だとしても、そんな昔の話の王子がミロなんておかしいだろ?まさか、あれか?話に出てきた女神の力で、うちの長老みたいに見た目だけ若いままとかか?それとも、一年に一日分しか心臓が動かないから、実は数日しか経ってませんとかか?」
明らかに動揺したカノンがやたら疑問系で捲し立てる。
(やたら疑問系って、お前は若者気分か…。
一年に一日分しか心臓が動かないからって何だ…。よくそんな事を思いついたな…。
動揺した者を見てると、案外冷静になるというのは本当の事
なのかも知れん…。)
私は、その姿を見ていると落ち着いてきた…。
「違…違う…。あれ…あの話…書いたの……俺…なん…だ。」
「は?」
カノンが捲し立ててる間に、ミロは少し落ち着きを取り戻した様だ。
「あの話…書いたの…俺…なんだよ。
父上…に、新しく…現代…語訳された、民話として…本にしてもらったんだ…。」
「何故………。」
「この国の敬うべき方々の話だ…。言い伝えて当然だ…。
それに、父上と母上の愛情が嬉しかったんだ…。
俺の…、存在を残しておきたかった…。」
「どういう意味………」
「俺の事は、この国の人々の記憶から消されている…。
当然だろう…。一国の王子が急に消えたなんて…。上手く誤魔化し続けたりなんて…、出来る訳がない。
でも、父上と母上と…、城の一部の人達は覚えてくれているから…良いんだけどな…。」
だから、こんな辺鄙な所でも十二分に生活出来ているのか…。
「ミロ、辛かったな…。
もう、十分だ。
ミロ。お前は自由になるが良い…。囲いの中で一生涯過ごす事は無い。
私達が必ずお前を自由にしてみせる…。」
「え…、何…言ってんの…?」
「だからな、氷の王だか何だか知らんが、ミロがいないと精霊の務めをやらんなんてふざけた事を言わない様に、お仕置きしてやるんだ。そうすれば、ミロは晴れて自由の身。囲われの身だからとか気にせず、俺と一緒に愛を温め合えるんだ。」
「違ぅ…。」
「え?」
「俺は囲われの身だと嘆いたりしてなんかないぞ…。」
「はぁ?否、だって、ミロ、あんなに泣いてたじゃないか。」
「あれは…、そうじゃないんだ…。そんな理由じゃ…ない…。」
(囲われの身を嘆いてる訳ではない?なのに、素直に好きになれるなら問題ないと言うのは…
つまりは…、まさか、そういう事なのか…。)
私は頭の中で一つの結論に達して、落胆した気分になる。
横を見ると、カノンもまた、己が中で同じ結論に達した様だ。
だが、
「だから…、だから何だって言うんだ…?
俺がミロを好きになるのは、俺の自由だろ…。俺が、愛してる相手に愛されたいと願うのも当然の事だろ…?俺が願うのは自由だろ…?
俺は本気なんだ!『好きになってはいけません。』と言われて『はい、そうですか。』なんて、なれる訳ないだろ!」
「私だって同じ思いだ…。だが、我々の言い分はミロを悲しませる事になるのも事実…。
己のが欲望だけを貫くと言う訳には………」
「黙れ!理屈だけ並べ立てられて諦められる様な想いじゃないんだ!理屈じゃないんだ!お前は何時もそうやって………!」
「はい、そこまでな。」
突然我々の長が現れた。瞬間移動か!
正直、物凄く驚いてしまった…。
「長…。」
「長老!?」
「長老って呼ばない。
突然不法侵入でお邪魔してすまないね。ミロ王子。」
急に長が現れた事に吃驚した様で唖然とした表情のミロ。
「私の名はシオン。
この双子ちゃん達の保護者です。
全く。二人共、ちょっと甘い顔して自由にさせてやったら、一向に帰って来ないし。
私はね、サガが家出しても何処に居るかちゃんと把握出来てるんだよ。カノンが何処でフラフラしてたかも全部。
それでもね、二人共子供になってショック受けてんだろうなって思って、ちょっと勝手さしてやってただけなのに。
よりによって、氷の王の囲いに手を出すなんてな!
恋愛は自由よ。誰を好きになるのも自由。
でもね!それは、あくまでも自分の心の中だけの話!
世の中にはやって良い事と悪い事が有るの!想いを伝えちゃ駄目な相手も居るし、自分に振り向かせようなんてしちゃ駄目な相手も居るの!
世の中には秩序ってものがあるだろ!いい年したお前達に、こんな説教する破目になるなんて…、頭の中迄子供に戻ったのか!」
一端終わります。
シオン様突如登場です。
シオン様に無理から収集つけてもらいました(^^;
シオン様割りとフリーダムなお方です(^^;
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